医療で使うSSSは、洞不全症候群(sick sinus syndrome)の略称です[1]。
脈が遅いだけで、洞不全症候群(SSS)と決まるわけではありません。 治療を考えるときには、めまい・失神・息切れなどの症状と心電図の所見が結びついているか、薬など改善できる原因がないかを確かめます[1][2]。ペースメーカーが必要かどうかも、脈の数だけでは判断できません。
すぐに救急対応が必要なサイン
次のような状態は、脈の数を測って考える前に、ためらわず119番に連絡してください[4]。
- 突然の強い胸の痛み、急な息切れ・呼吸困難がある
- 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応がおかしい
- 急にふらつき、立っていられない
また、気を失って倒れたが今は意識が戻っているという場合も、「もう治ったから次の定期受診で相談しよう」と後回しにするのは避けたい状況です。失神の背景に不整脈がある可能性もあるため、速やかに救急対応が可能な医療機関へ相談してください[1][2]。脈の数だけを基準に「何回以下なら救急」と線を引く考え方は、この病気では適切ではありません。
洞不全症候群とは何が起きている状態か
心臓には、心房の上のほうに洞結節という場所があります。ここは「そろそろ次の一拍を打ちましょう」という拍動の合図をつくる役割を担っていて、心臓全体のペースメーカーのような働きをしています。
洞不全症候群は、この合図をつくる働きや、合図が心房へ伝わっていく過程に問題が生じた状態です[1]。
この病名は血管の詰まりを表す言葉ではなく、拍動の合図をつくる仕組みの不調を表します。原因を調べる際には、心臓の血流の病気なども含めて背景を確認します[1]。
背景には、加齢に伴う変化や、もともとある心臓の病気が関わることがあります。一方で、服用中の薬、甲状腺の機能、電解質のバランス、自律神経の状態、睡眠時の呼吸の問題などが影響していることもあり、これらは調整によって改善しうる要素です[1]。
分類の考え方(ルーベンシュタイン分類)
洞不全症候群は、心電図での現れ方によって大きく3つに分けて考えられています[1]。
- I型:洞性徐脈。洞結節からの合図そのものが遅くなっている状態。
- II型:洞停止、または洞房ブロック。合図が一時的に出ない、あるいは心房へ伝わらないために、脈が抜ける形になる状態。
- III型:徐脈頻脈症候群。速い不整脈(心房細動を伴うことが多い)と遅い脈が入れ替わって現れる状態。
分類は、その後の検査の進め方や治療を考える際の共通言語として使われます。自分がどの型に当てはまるかを心電図なしに推測することは難しいため、記録に基づいた判断が必要です。
自覚症状はどう現れるか
心臓のリズムに関わる症状は、必ずしも「胸がドキドキする」という形だけではありません。疲れやすさ、動いたときの息切れといった、日常のなかで見過ごしやすい形で現れることもあります[1]。
より注意したいのは、目の前が暗くなる感じ(ブラックアウト)や失神です。これらは受診の優先度を上げるサインになります[1]。
III型では、「動悸がしばらく続いて、それがすっと止まった直後に、ふっと気が遠くなる」という症状が現れることがあります。速い脈が止まった後に脈の間が空くことで、脳への血流が一時的に減り、ふらつきにつながることがあると考えられています[1]。ただし、この経験があるだけで診断が確定するわけではなく、あくまで心電図記録と突き合わせて判断すべき手がかりです。
診断のために行う検査
洞不全症候群の評価では、次のような情報が土台になります[1]。
問診で整える情報が非常に重要です。症状が出るのは何をしているときか、どのくらい続くか、いつ頃から起きているか。そして服用中の薬の一覧、過去に撮った心電図の記録があるかどうか。こうした情報を、心電図の記録と照らし合わせます。
12誘導心電図は基本の検査ですが、限界もあります。1回の短い記録が正常でも、ときどきしか起きない異常を否定することはできません[1]。症状があるときにちょうど記録が取れているかどうかが鍵になるためです。
そこで、症状の起きる頻度に応じて、ホルター心電図(24時間程度の記録)やより長期間の記録が選ばれます。週に何度もある症状と、数か月に一度の症状では、適した記録方法が変わってきます[1]。心臓の構造を確認するために心エコーが選択されることもあります。
運動時の脈の上がり方を評価する必要がある場合には、医療者の管理下で行う運動評価が検討されます。自宅で階段を上って脈を測るような自己流の負荷試験は、安全面から適切な方法とは言えません[1]。
健診で心電図所見を指摘された場合の考え方については、健診結果の受け取り方と次の一歩についての解説も参考にしてください。
元に戻せる原因を先に確かめる
治療方針を考える際には、調整や治療で改善できる原因を確認します[1][2]。
代表的なものとして、脈を遅くする作用のある薬(一部の血圧の薬、不整脈の薬など)、甲状腺機能の低下、電解質の異常が挙げられます。これらが背景にある場合、原因への対応によって脈の状態が変わることがあります[1]。
ここで強調しておきたいのは、自己判断で薬を中止しないでくださいということです。その薬が必要だから処方されているという場合も多く、中断によって別のリスクが生じます。気になる薬がある場合は、中止するのではなく、処方している医師に相談してください[2]。
ペースメーカーを考える目安
ペースメーカーの適応は、ガイドラインで整理された考え方に基づいて検討されます[2]。
症状や心不全が、洞不全症候群による徐脈・洞停止・洞房ブロック、あるいは運動時に心拍数が十分に上がらないことによるものと確認された場合、ペーシングが推奨されます。どうしても中止できない薬に伴う徐脈の場合も、この検討対象に含まれます[2]。
一方、症状のない洞性徐脈だけでは、それ自体はペースメーカーの適応になりません[2]。ただし「症状がなければ全員不要」と単純化することもできません。症状のない洞停止や洞房ブロックについては、個別に検討されることがあると位置づけられています[2]。
徐脈頻脈症候群で、速い不整脈を抑える薬を使うと徐脈が悪化してしまう場合には、ペーシングが必要になることがあります[2]。
ペースメーカーの役割と、ほかの治療を考える場合
ペースメーカーは、脈が遅くなったときに電気的な刺激で補う装置です。症状の改善が期待されますが、洞不全の原因や心房細動そのものを治す装置ではありません。植込みに伴う感染などのリスクや、その後の機器の確認についても専門医と相談します[2][3]。
心房細動を伴う徐脈頻脈症候群では、心房細動へのカテーテルアブレーションを検討する場合もあります。2024年の韓国の小規模な試験では、条件を満たす68例を解析し、アブレーション後にも失神の再発でペースメーカーが必要になった方がいました[3]。すべての洞不全症候群で置き換えられる治療ではなく、治療対象や効果の限界を個別に確認する必要があります。
よくあるご質問
症状がなければペースメーカーは絶対に不要ですか
「症状のない洞性徐脈だけ」であれば、それ自体はペースメーカーの適応とはされていません[2]。ただし、症状のない洞停止や洞房ブロックが記録されている場合には、個別に検討されることがあると整理されています[2]。また「症状がない」と思っていた疲れやすさや息切れが、実は関連していたと分かることもあります[1]。心電図の記録内容を踏まえた個別の判断になります。
スマートウォッチの脈拍表示で診断できますか
日常の記録として症状のあった時間を残す手がかりにはなり得ますが、それだけで洞不全症候群と診断したり否定したりすることはできません[1]。診断は、症状の状況と心電図の所見を医師が照合して行います。表示された数値を自分で判定基準にするのではなく、気になった時刻と、そのときどんな症状があったかを書き留めて持参するという使い方が現実的です。
運動は控えるべきでしょうか
一律に制限が決まるものではなく、症状の有無、記録された心電図の内容、背景にある心臓の状態によって考え方が変わります。運動時の心拍応答を確認する必要があると判断された場合は、医療者の管理下での運動評価が検討されます[1]。自宅で階段を使って負荷をかけて確かめるような方法は避け、活動の範囲については個別に相談してください。
受診を検討されている方へ
急を要する症状がなく、状態が落ち着いている段階での初診は、山形県酒田市の丸岡医院の内科外来へ、予約なしに直接お越しいただけます。お電話でのお問い合わせは 0234-23-8166 です。受診方法の詳細は当院の受診方法のご案内をご確認ください。
受診時には、次のものをお持ちいただくと相談がスムーズです。
- 過去の心電図や健診結果の紙の記録
- 服用中の薬がわかるもの(お薬手帳など)
- 症状が出た日時・そのときの状況・続いた時間のメモ
脈やリズムに関する診療の考え方については、循環器内科の診療内容のページもあわせてご覧ください。
胸の強い痛み、激しい息苦しさ、意識の異常、立っていられない状態がある場合は、受診方法を調べる前に119番へ連絡してください[4]。
参考文献
- 日本循環器学会/日本不整脈心電学会.『2022年 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン』(2022年、ウェブ掲載更新2025年). 文献を読む
- Nogami A, Kurita T, et al. JCS/JHRS 2019 Guideline on Non-Pharmacotherapy of Cardiac Arrhythmias. Circulation Journal 2021;85(7). 文献を読む
- Cho MS, Lee JH, Nam GB, et al. Comparison between catheter ablation versus permanent pacemaker implantation as an initial treatment for tachycardia–bradycardia syndrome patients: a prospective, randomized trial. BMC Cardiovascular Disorders 2024;24:246. 文献を読む
- 厚生労働省「上手な医療のかかり方」緊急時の対応(成人)(2026年9月26日閲覧). 文献を読む




