血圧が高いと言われても、自覚症状がないと「様子を見よう」と後回しにしがちです。しかし高血圧は症状がないまま血管や心臓、腎臓に負担をかけ続けるため、症状の有無ではなく数値と経過で判断することが大切です[1][4]。
この記事では、酒田市で内科を受診する目安として、診断の基準値と治療で目指す値の違い、家庭での正しい測り方、受診時に持参してほしいもの、そして急いで救急を要する症状を整理します。丸岡医院(本院・内科)の受診方法もあわせてご案内します。
高血圧はなぜ「症状がないのに」治療が必要なのか
高血圧そのものは、多くの場合ほとんど症状を出しません。頭痛や肩こりがあっても血圧とは無関係なことが多く、逆に血圧がかなり高くても平気に感じる人が少なくありません[1]。
それでも治療が勧められるのは、高い血圧が長く続くと脳卒中、心筋梗塞、心不全、腎機能低下などの危険が高まることが分かっているためです[1][4]。「つらくないから大丈夫」ではなく、「数値がどうか」「どれくらい続いているか」で考えるのが基本になります。
診断の基準値と、治療で目指す値は別のもの
診断の基準(繰り返し測った値で判断)
日本高血圧学会の2025年版ガイドラインでは、診察室で繰り返し測った血圧が上(収縮期)140mmHg以上、または下(拡張期)90mmHg以上であれば高血圧と診断されます。家庭で測る場合は上135mmHg以上、または下85mmHg以上が基準です[1]。
診察室と家庭では測定環境が異なるため、基準も区別します。上と下の両方が高くなくても、一方が基準以上であれば評価が必要です。家庭血圧は朝・晩それぞれの複数日の平均で判断します[1]。
治療で目指す値(原則の目標)
一方、診断された後に治療で目指す値は、診断基準より低く設定されています。原則として診察室で130/80mmHg未満、家庭で125/75mmHg未満が目標で、診察室と家庭の両方で目標を下回ることが望まれます[1]。
ただし、この目標は「全員がすぐに到達すべき数字」ではありません。ガイドラインでも、ふらつき、立ちくらみ、腎機能や電解質の変化を確認しながら、その人が無理なく続けられるペースで進めることが求められています[1]。年齢だけで一律に目標を緩める決まりはなく、75歳以上だから自動的に別扱いという考え方も採られていません[1]。
目標値を見て自分で薬を増減しないでください
家庭血圧が目標より高い日があるからといって、ご自身で薬を追加したり、低めの日に勝手に減らしたりすることは避けてください。数値の解釈と薬の調整は、平均値、腎機能、他の薬との相互作用、副作用の出方をふまえて診察で判断します[1]。気になる数値があれば、記録を持って受診時にご相談ください。
1回の数値では判断できない理由
血圧は、時間帯、活動、緊張や測定条件によって変動します。健診の1回の測定や、体調が悪いときに測った1回の高い数値だけで高血圧と決めることはできません。診断も治療の評価も、「診察室で繰り返し測った値」や「家庭での朝・晩それぞれの平均値」で行います[1]。
家庭血圧の評価では、朝の測定と晩の測定を別々に集計します。朝だけ高い人、晩だけ高い人がいるため、両方を混ぜて平均すると特徴が見えなくなるからです[1][2]。
白衣高血圧と仮面高血圧
診察室では高いのに家庭では正常な状態を「白衣高血圧」、反対に診察室では正常なのに家庭では高い状態を「仮面高血圧」と呼びます[1]。診察室以外の血圧も把握することが、見つける手がかりになります。とくに仮面高血圧は診察室の数値だけでは見逃されるため、健診で「異常なし」でも家庭で高いと感じるなら記録を持って相談する価値があります[1]。
家庭血圧の正しい測り方
家庭血圧は治療方針を決めるうえで診察室血圧と同等以上に重視されます。日本高血圧学会の一般向け指針に沿って、以下の方法で測ってください[2]。
測る機器と姿勢
上腕(二の腕)で測るカフ式の血圧計を使います。手首式や指式は誤差が出やすいため、可能であれば上腕式を選んでください[2]。椅子に座り、背中をもたれさせ、足を組まずに床につけ、カフを心臓の高さに合わせます。測る前に1〜2分は静かに座って安静にしてください[2]。
朝の測り方
起きてから1時間以内に測ります。トイレを済ませた後、朝食の前、そして朝の薬を飲む前に測るのが決まりです。毎日できるだけ同じ条件で記録することが、治療の評価に役立ちます[2]。
晩の測り方
寝る直前に測ります。入浴や飲酒の直後は血圧が変わりやすいので、少し時間をおいてから座って安静にし、測定してください[2]。
回数と日数
1回の機会に2回測り、その平均を記録します。2回の差が大きくても、そのまま両方の値を書いておいて構いません[2]。少なくとも5日分、できれば7日間続けて測り、朝の平均と晩の平均をそれぞれ出したものが評価の材料になります[1][2]。
記録のコツ
血圧計の記録機能を使うか、手帳に日付・朝晩・2回の値・脈拍を書いてください。高かった日や、体調が悪かった日、測り忘れた日も正直に残しておくと、診察で正しく評価できます。都合の良い低い値だけを抜き出さないことが大切です[1]。
内科を受診する目安と、受診時に持ってきてほしいもの
こんなときは受診を
次のような場合は、内科での相談をおすすめします。
健診や職場の検査で高血圧または要精査・要治療と判定された。家庭で測った上の血圧が135以上、または下が85以上の日が続いている。家庭血圧の記録はないが健診で高めと言われたことがある。すでに治療中で、家庭血圧が目標から大きく外れる日が多い、あるいはふらつき・立ちくらみが増えた[1][2]。
記録がなくても受診を遅らせないでください
「7日分そろってから行こう」と待つ必要はありません。健診で高値を指摘されていたり、家庭での測定でかなり高い数値が続いているなら、記録が不完全でもまず受診し、測り方や記録の続け方を診察で確認するほうが安全です[1]。受診後に家庭血圧を測り始めても、診断や治療の評価は十分に行えます。
持参してほしいもの
家庭血圧の記録(高い日も含めた実際の値)、直近の健診結果(血圧のほか、腎機能・尿検査・コレステロール・血糖の項目が参考になります)、現在飲んでいる薬やサプリメントの一覧またはお薬手帳、の3点があると診察がスムーズです[1]。健診結果の見方については、健診結果の相談ページもご覧ください。
治療はどう進むのか
生活習慣の見直しは全員の土台
高血圧と診断された場合、薬を使うかどうかにかかわらず、生活習慣の見直しは治療の基本です[1][4]。日本高血圧学会は、食塩摂取を1日6g未満にすることを目標として示しています[4]。
日々の食事では、ラーメンやうどんの汁を残す、漬物や干物、練り製品といった塩分の多い保存食を毎日ではなく回数を決めて楽しむ、しょうゆは小皿に少量とり、つけすぎないようにする、だし・酢・香辛料・柑橘で味を補う、加工食品の栄養成分表示で食塩相当量を確認する、といった方法があります[4]。体重が多い場合の適切な減量、節酒、状態に合った運動も相談します。禁煙は心血管病の予防のために大切です[4]。
薬による治療の開始時期は人によって異なる
薬を使い始めるタイミングは、血圧の高さだけでなく、年齢、糖尿病や腎臓病の有無、心血管病の既往、喫煙などを組み合わせたリスク評価で判断されます[1]。リスクが高い場合や血圧がかなり高い場合は、生活習慣の見直しと同時に早期から薬を始めることがガイドラインでも想定されています[1]。「初診では必ず数か月は薬を使わない」という一律の決まりはありません。逆に、リスクが低ければ生活習慣の改善を中心に経過を見る選択もあります。どちらが適切かは診察で個別に判断します[1]。
「より低く」を目指す根拠と注意点
血圧をより厳しく下げると心血管病が減るかを検証した大規模試験として、米国を中心に行われたSPRINT試験があります。この試験は、50歳以上で心血管病のリスクが高く、糖尿病や脳卒中の既往がない人を対象に、上の血圧を120未満を目指す積極治療と140未満を目指す標準治療を比べ、積極治療のほうが心筋梗塞などの急性冠症候群・脳卒中・心不全・心血管死をまとめた主要な出来事が少ないことを示しました[3]。
同時に、積極治療の群では低血圧、失神、電解質の異常、腎機能の悪化といった有害事象が多くみられました[3]。このため、目標を厳しくするときは腎機能の血液検査やふらつき・立ちくらみの確認を組み合わせて進める必要があります[1][3]。この試験の対象は特定の条件の人に限られ、糖尿病のある方や脳卒中の既往がある方、日本人の日常診療にそのまま数字を当てはめることはできません。試験の目標値を個人が自己判断で目指すものでもなく、ガイドラインの原則目標と個々の耐えられる範囲をもとに診察で決めていきます[1][3]。
救急を要する症状と、数値がとても高いとき
次の症状は、血圧の数値に関係なく、救急車の要請を含めた緊急の評価が必要です[5]。
突然の片側の手足の脱力やしびれ、ろれつが回らない・言葉が出ない、経験したことのないような突然の激しい頭痛、急に起きた胸の痛みや締めつけ感、突然の強い息苦しさ。これらは脳卒中や心筋梗塞などが疑われる症状であり、家庭で血圧を測って様子を見るのではなく、すぐに119番で救急要請してください[5]。
一方、上記のような症状はないものの、家庭で測り直しても非常に高い数値が続く場合は、次回の受診まで待たず、その日のうちに医療機関へ電話で相談してください。本院の診療時間外は、利用できる救急相談窓口や時間外診療の医療機関へ連絡します。頭痛や肩こりなどの軽い症状と血圧の数値だけで「緊急かどうか」を機械的に分けることはできないため、迷ったときは早めのご相談をおすすめします[1][5]。
丸岡医院(本院・内科)での受診方法
高血圧の相談は、内科のご案内ページに記載の診療時間内に本院へ直接ご来院いただくか、お電話(0234-23-8166)でご相談ください。本院の内科初診は予約不要です。受診の流れは受診案内ページにまとめています。
受診時には、家庭血圧の記録や健診結果をもとに相談できます。診断や治療の評価では、血液・尿検査などの必要性も医師が判断します。検査の内容や費用は状態によって異なりますので、診察時にご確認ください。
よくある質問
血圧計は手首式でも良いですか
上腕式が推奨されています。手首式は測る位置や姿勢で誤差が出やすいためです[2]。すでに手首式をお使いの場合は、測定時の腕の高さに注意し、可能なら受診時に持参して数値を比べてみてください。
朝の薬を飲んでから測ってしまいました。記録は無駄ですか
無駄ではありませんが、「薬を飲んだ後の値」と分かるようにメモしておいてください。本来は薬を飲む前に測る決まりなので、翌日からは起床後1時間以内・排尿後・朝食前・服薬前の順で測るようにしましょう[2]。
家庭では正常なのに健診では高いと言われます
白衣高血圧の可能性があります。ただし家庭血圧の測り方が正しいか、朝晩それぞれの平均で本当に基準以下かを確認する必要があるため、記録を持って一度ご相談ください[1]。
目標の125/75未満にならないと薬が増えるのですか
数値が目標に届かないからといって自動的に薬が増えるわけではありません。ふらつきや腎機能、生活の状況をふまえて、個別に判断します[1]。反対に、下がったからといって自己判断で薬を止めることも避けてください。
減塩は何から始めれば良いですか
まず麺類の汁を残すこと、漬物や加工食品の量と頻度を減らすこと、食塩相当量の表示を見る習慣をつけることが取り組みやすい入口です。目標は1日6g未満です[4]。
参考文献
- 日本高血圧学会『高血圧管理・治療ガイドライン2025』(2025年8月29日発行)。公式案内・公開閲覧版。診断・家庭血圧・降圧目標の項(44–45・67–68ページ)と正誤表(2026年3月31日)を確認。
- 日本高血圧学会家庭血圧の測り方・家庭血圧測定の手引き。
- SPRINT Research Group. A Randomized Trial of Intensive versus Standard Blood-Pressure Control. N Engl J Med. 2015;373:2103–2116. DOI: 10.1056/NEJMoa1511939. PMID: 26551272。論文情報。方法、結果、表2、資金源の記載を参照。
- 日本高血圧学会高血圧を知るための一般向け解説(2025年版ガイドラインに基づく生活習慣・減塩の情報)。
- 厚生労働省「上手な医療のかかり方」緊急時の受診の目安。




