左脚ブロック(LBBB)は、心臓の左心室へ電気が伝わるタイミングが遅れる心電図所見です。自覚症状がなく、健診で初めて見つかることもあります。息切れや失神などがあれば、その原因を調べることが重要です。左脚ブロックという所見名だけで、ペースメーカーが必要になるわけではありません[1]。
一方で、これまで指摘されたことのない左脚ブロックが新しく見つかった場合には、その背景に心臓の構造の病気(心筋や弁の異常など)が隠れていないかを一度確認しておくことがすすめられています[1]。症状の有無を確認し、過去の心電図との比較や心エコーなどで評価します。
緊急で受診・救急要請が必要なサイン
次のような症状があるときは、健診結果の相談を待たず、119番へ連絡してください[5]。
- 突然の激しい胸や背中の痛み
- 締めつけられるような胸の痛みが続く
- 急に息が苦しくなった
- 意識がはっきりしない、急にふらついて支えなしで立てない
強い症状があるときは様子を見ず、救急車を要請してください。ご自身で運転して向かわないでください。
いったん意識を失って回復した(失神した)場合も、次の健診まで待たず、速やかに医療機関へ相談してください。電気の伝わり方の異常がある方の失神では、一時的に脈が遅くなる不整脈などを調べる必要があります[1]。
左脚ブロックとは何か
心臓は右心房の「電気の発火点」から出た信号が心臓全体に広がり、そのタイミングで筋肉が収縮しています。左心室へ信号を届ける配線を「左脚」と呼び、その伝わりが悪くなった状態が左脚ブロックです。
ここで大切なのは、これが電気の伝わり方の所見であって、心臓の血管(冠動脈)が詰まっていることを意味するものではないという点です。また、左心室に電気が届かなくなるわけでもありません。左脚以外の経路を通って、少し遅れながらも左心室は興奮し、収縮しています[1]。
なお、スマートウォッチの波形や脈の自己測定だけで左脚ブロックを判断することはできません[1]。診断は医療機関の心電図に基づきます。
心電図と心エコーは役割が違う
健診で使われる心電図は、心臓の電気信号を体表から記録する検査です。左脚ブロックという「所見」を見つけるのは心電図の役目です。
しかし心電図は、心臓の壁の厚さ、収縮する力、弁の動きといった「形と働き」を映すものではありません。そこで新しく左脚ブロックが見つかった方には、心エコー(心臓超音波検査)で心臓の構造と機能を確認することがすすめられています[1]。胸に超音波の装置を当てて、心臓の動きや構造を調べます。
それでも構造の病気が疑われる場合には、より詳しい画像検査が選ばれることがあります。また、脈が遅くなることによる症状が出たり消えたりする場合には、長時間記録する携帯型の心電図が検討されます[1]。どの検査をどの順で行うかは、症状や年齢、他の病気の有無をふまえて診察した医師が判断します。
考えられる背景と「症状」の扱い方
背景に心筋や弁の病気などがないかを調べ、心臓の収縮力も確認します。背景の病気や心機能の低下があるかどうかで、その後の対応が変わります[1][2]。
息切れ、疲れやすさ、胸の違和感、めまいといった症状を、評価をしないまま「左脚ブロックのせい」と決めつけないことも重要です。背景にある心臓の病気や、ほかの不整脈との関係を、診察や必要な検査で確認します。症状と不整脈の関係を調べるために、長時間の心電図記録を使う場合もあります[1]。
最近の研究からわかること(と、わからないこと)
2025年に報告された米国の観察研究では、研究開始時に心不全がなく、左心室の収縮力が保たれていた65歳以上の4,541人を長期追跡しました。左脚ブロックがあった44人では、なかった人に比べ、その後の心不全発症が多いという関連が示されました[3]。
ただし、左脚ブロックの人数が少なく、高齢で大半が白人の集団であること、観察期間と現在では治療環境が異なること、測定されていない要因の影響が残ることが限界です。この観察研究から、左脚ブロックが必ず心不全を起こすという因果関係や、症状のない人に予防的な機器治療を行う効果は判断できません[3]。
健診で見つかった場合も背景を確認し、その方に合った経過の見方を医師と決めることが大切です[1][2]。研究の結果を、日本の若い方の発症確率や寿命にそのまま当てはめることはできません[3]。
治療の考え方
治療方針は、背景の病気や心機能、ほかの伝導障害を踏まえて決めます。心不全などが見つかれば、その病気に応じた薬物治療などを行います[1][2]。
ペースメーカーについては、所見名だけで決まるものではなく、伝導障害の性質や症状の有無をふまえて検討されます[1]。症状のない方を一律に植え込みへ進めることはしません[1]。
心臓再同期療法(CRT:左右の心室の収縮タイミングをそろえる特殊なペースメーカー)は、心不全の治療の一部として、限られた条件を満たす方に検討されるものです。日本の心不全ガイドラインでは、心不全症状、薬物治療を十分に行った上での状態、心臓の収縮力、リズム、心電図の波形の幅と形、他のペーシングの必要性、個々の利益と不利益などを総合して判断するとされています[2]。最も効果が期待される代表例として、標準的な薬物治療を尽くしてもなお症状が残り、収縮力が低下し、幅の広い左脚ブロック型の波形を伴う場合が挙げられていますが、条件は細かく分かれます。つまり左脚ブロックの方すべてに行う治療ではありません[2]。
運動について
構造的な心臓の病気がなく、より進んだ伝導障害への進行もない場合、左脚ブロックがあること自体で運動を一律に制限する必要はないとされています[4]。ただし、新しく見つかった場合や症状がある場合は、まず評価を受けてください。競技スポーツを含め、どの程度の運動ができるかは検査結果などに応じて個別に確認します[4]。
受診のときに持っていくとよいもの
症状がなくても、健診で新たに左脚ブロックを指摘された場合は、医療機関で評価を受けてください[1]。そのとき、次のものがあると診察が進みやすくなります。
- 過去の心電図(以前の健診や他院のもの)
- 今回の健康診断の結果用紙
- 服用中の薬やサプリメントの一覧(お薬手帳)
- 症状がある場合は、いつ・どんなときに・どのくらい続いたかのメモ
過去の心電図があると、「今回初めて出た所見なのか」「以前からあったのか」の判断材料になります。これは今後の方針を考えるうえで大きな手がかりです。
健診結果全体の読み方については健診結果でお困りの方へのご案内もあわせてご覧ください。
当院での対応について
丸岡医院の本院は山形県酒田市にあり、内科・消化器内科を中心に診療しています。初診の方も予約なしで受診いただけます。直接ご来院いただくか、お電話(0234-23-8166)でご相談ください。受診方法のご案内もご参照ください。循環器の診療については循環器内科のご案内をご確認いただけます。
検査の内容や進め方、経過をどのくらいの間隔で見ていくかは、症状や既往、検査結果をふまえて診察時に一緒に決めていきます。あらかじめ決まった検査の時期や回数を、すべての方に当てはめることはできません。
参考文献
- 2018 ACC/AHA/HRS Guideline on the Evaluation and Management of Patients With Bradycardia and Cardiac Conduction Delay(Guidelines Made Simple)— 新たに見つかった左脚ブロックに対する心エコーの推奨、伝導障害の評価手順。文献を読む
- 日本循環器学会/日本心不全学会「2025年改訂版 心不全診療ガイドライン」— 心臓再同期療法(CRT)の適応に関する記載。文献を読む
- Thein AS, Dixit S, Soliman EZ, et al. Left Bundle Branch Block as a Risk Factor for Heart Failure. JAMA Network Open. 2025;8(8):e2525801.(米国・65歳以上のコホート研究。左脚ブロック群44名を含む4541名、追跡期間中央値14.6年)文献を読む
- 日本循環器学会/日本不整脈心電学会「2022年 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン」— 伝導障害と運動に関する記載。文献を読む
- 厚生労働省「上手な医療のかかり方」救急車を呼ぶべき症状(成人)文献を読む
※この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個々の診断や治療方針については、必ず医療機関でご相談ください。




