メインコンテンツへ
循環器疾患

1度房室ブロック|健診心電図の意味・原因と受診の目安

1度房室ブロックの健診結果の確認を案内する、資料と眼鏡のイメージ画像

健康診断の心電図で「1度房室ブロック」と書かれ、不安になって調べている方は少なくありません。名前に「ブロック」と付くため、血管が詰まった、心臓が止まる病気だと誤解されがちですが、いずれも正確ではありません。ここでは、この所見が心臓の中で何を意味しているのか、どんなときに詳しい評価が必要なのかを、平易な言葉で整理します。

1度房室ブロックとは何を示す所見か

心臓は、上の部屋(心房)で生まれた電気信号が下の部屋(心室)へ伝わることで規則正しく動きます。この心房から心室への伝わりにかかる時間が心電図のPR間隔で、0.20秒を超えて長くなった状態が1度房室ブロックです[1]。

重要なのは、1度では電気信号が1対1ですべて心室に伝わっているという点です[1]。信号が抜け落ちているわけでも、拍動が止まっているわけでもありません。「伝わるのが少し遅い」状態を指す用語であり、心臓の血管の詰まりを直接表す所見ではありません。

もう一つ知っておきたいのは、遅れが生じている場所が必ずしも房室結節とは限らないことです[1]。同じ「PRが長い」という見え方でも、伝導路のどの部分で時間がかかっているかによって意味合いが変わります。だからこそ、心電図の数値だけを見て一律に判断することはしません。

症状との関係をどう考えるか

1度房室ブロックは、多くの場合それ自体では症状を起こしません。健診で初めて指摘され、本人はまったく自覚がないというのが典型的な見つかり方です。

したがって、たまたま同時期にあっためまいや疲れやすさを、自動的にこの所見のせいと決めつけないことが大切です。症状の原因が別にないかも含めて診察し、心電図の変化と症状が重なるかを確認します[1]。

一方で、PR間隔が0.30秒を超えるほど著しく延長すると、心房と心室の収縮のタイミングがずれ、心臓から送り出される血液の効率に影響しうると指摘されています[1]。ただし、これがそのままペースメーカ植え込みの基準になるわけではありません[1]。症状がある場合には、その症状と心電図所見が本当に結びついているのかを確認する評価の流れがとられます[1]。

判断を左右する要素

同じ「1度房室ブロック」でも、次のような点で評価の重みは変わります[1]。

  • PR間隔の延長の程度
  • 動悸・失神・息切れなど症状の有無
  • 心電図の他の所見(QRS幅や他の伝導異常など)
  • 心臓の構造的な病気を疑う所見の有無
  • 服用中の薬の内容

症状がなく、構造的な心疾患を疑う手がかりもない場合は、経過をみる方針となることが多いとされています[1]。逆にいえば、「1度なら全員が完全に問題なし」とも「見つかったらペースメーカが必要」とも言えません。個々の背景を踏まえて判断する所見です。

可逆的・生理的な要因もある

PR間隔の延長には、元に戻りうる要因や生理的な要因が関わることがあります[1]。

たとえば、房室伝導を抑える作用のある薬剤の影響、睡眠時の自律神経の変化、睡眠中の呼吸の異常などです[1]。睡眠中は副交感神経が優位になり、伝導が一時的にゆっくりになることがあります。

ここで注意してほしいのは、薬が関係していそうだと思っても、自分の判断で中止せず、処方した医師に確認することです。その薬は別の目的(血圧や不整脈の管理など)で必要とされている可能性があり、急な中断がかえって不利益になることがあります。お薬手帳を持参して、医師と一緒に内容を確認してください。

受診時に持っていくとよいもの

外来での判断精度を上げるために、次のものをご用意ください。

  • 今回の健診心電図の実物(コピーで構いません)
  • 過去の心電図があればそのコピー
  • お薬手帳、またはサプリメントを含む服用中のもの一覧

過去の心電図があると、「以前からあった所見か」「最近変化したのか」が分かります。これは今後の見通しを考えるうえで大きな情報になります。

診察では、PR間隔の延長の程度、QRSの形や幅、その他の付随する心電図所見を確認します。心臓の構造的な病気が疑われる場合には心エコー検査が検討され[1]、より高度な画像検査は必要と判断された一部の場合に限られます[1]。症状が出たり消えたりするようであれば、より長時間の心電図記録が選択肢になります。これらはすべて「必要と判断されれば」行うものであり、全員に一律で実施するものではありません。

長期の観察研究が示していること

地域住民を対象とした長期追跡研究として、Framingham研究の解析があります。成人7,575人を対象とし、そのうちPR間隔が0.20秒を超えていたのは124人でした[2]。

この研究では、PR間隔が延長している群は正常群と比べて、心房細動、ペースメーカ植え込み、総死亡との統計的な関連が観察されました[2]。

ただし解釈には注意が必要です。これは介入試験ではなく観察研究であり、関連があることと、PR延長が悪い結果を引き起こすこととは同じではありません[2]。また、全員が進行するという意味でもなく、症状のない段階で予防的にペースメーカを入れれば有益だと示したものでもありません[2]。実際、ペースメーカが必要になる理由は房室ブロックの進行だけではありません[2]。

米国の白人を中心とする集団を長く追った研究で、日本の健診受診者一人ひとりに同じ見通しが当てはまるとは限りません[2]。研究は経過を確認する意味を示しますが、将来の病気を個人単位で断定するものではありません。

その後のフォローと日常生活

経過観察の間隔は、PR延長の程度、症状の有無、他の心電図所見、基礎疾患などを踏まえて個別に決まります。次の心電図検査の時期と、予定を待たずに受診すべき症状を担当医に確認してください。

運動については、心電図全体と症状を踏まえ、続けてよい運動の範囲を確認しましょう。特に伝えたいのは、運動時にふらつき、強い息切れ、意識が遠のく感じがあるかどうかです。そうした労作時の症状があれば、必ず受診時に伝えてください。

緊急性の目安

次の症状が今まさに続いている場合は、受診予約ではなく119番通報が必要です[3]。

  • 強い胸の痛みが続いている
  • 突然の息苦しさ
  • 意識がもうろうとしている、反応がおかしい

失神から回復していても、原因によっては緊急の評価が必要です。失神や新たな運動時のめまいがあれば、次の健診を待たず速やかに医療機関へ相談してください。胸痛・息苦しさを伴う、繰り返す、意識が十分に戻らない場合は119番へ連絡してください[1,3]。

症状がなく、健診で1度房室ブロックだけを指摘された場合は、通常の診療時間内に結果を持参して相談しましょう。健診で早期受診を指示されている場合は、その案内に従ってください。

よくある質問

Q. 1度房室ブロックは薬で治せますか?

PR間隔を短くするための薬物治療が、症状のない1度房室ブロックに対して一律に行われることはありません。まず確認するのは、伝導を遅らせうる薬剤を服用していないか、睡眠中の呼吸の問題など可逆的な背景がないかという点です[1]。薬の変更が必要かどうかは、処方した医師と相談してください。

Q. 運動やスポーツは続けてよいですか?

運動の内容や強度と、心電図・症状を合わせて担当医に相談してください。特に大切なのは、体を動かしたときにふらつき・失神感・不釣り合いな息切れが出ていないかです。そうした症状があれば、内容を具体的にメモして受診時に伝えてください。

Q. 将来、重い房室ブロックに進むのでしょうか?

観察研究ではPR延長とペースメーカ植え込みとの関連が報告されていますが、これは全員が進行することを意味しません[2]。だからこそ、過去の心電図と比較し、症状の変化を見ながら個別に経過を追う方針がとられます[1]。

受診について

健診で1度房室ブロックを指摘され、症状がない場合は、健診の受診指示を確認し、内科で相談してください。当院(丸岡医院・酒田市)では、内科の初診はご予約なしで直接ご来院いただけます。お問い合わせは 0234-23-8166 へ。受診の際は、今回と過去の心電図のコピー、お薬手帳をご持参ください。

繰り返しになりますが、強い胸痛が続く、突然息が苦しい、意識がはっきりしないといった状況では、受診の相談より先に119番通報をお願いします[3]。

参考文献

  1. 日本循環器学会/日本不整脈心電学会. 2022年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン. 資料を読む
  2. Cheng S, Keyes MJ, Larson MG, et al. Long-term Outcomes in Individuals With Prolonged PR Interval or First-Degree Atrioventricular Block. JAMA. 2009;301(24):2571–2577. doi:10.1001/jama.2009.888. 資料を読む
  3. 厚生労働省. 上手な医療のかかり方(緊急性の判断の目安). 資料を読む

あわせて読みたい