のどの渇きや尿の変化は糖尿病を調べるきっかけになりますが、症状だけで診断はできません。反対に、症状がなくても健診で血糖値やHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)を指摘された場合は、結果を確認する必要があります。この記事では、症状からどこまで分かるのか、血液検査で何が加わるのか、そして受診を急ぐ症状や外来での相談の進め方を、日本糖尿病学会の診療ガイドラインや公的な患者向け情報にもとづいて整理します。
症状だけでは糖尿病かどうかは決まらない
まず知っておいてほしいのは、糖尿病は「症状の有無」だけでは判断できない病気だということです。国立健康危機管理研究機構の糖尿病情報センターは、糖尿病では症状がまったく出ないことがあると説明しています(糖尿病情報センター「糖尿病とは」)。健康診断で初めて指摘されて分かる人もいれば、急に症状が出て受診する人もいます。
一方で、日本糖尿病学会の『糖尿病診療ガイドライン2024』では、糖尿病の診断は慢性的な高血糖の状態を、症状や経過とあわせて評価して行うものとされています(糖尿病診療ガイドライン2024 第1章)。つまり、症状は診断の手がかりのひとつではあっても、それだけで確定するものでも、否定するものでもありません。「症状がないから大丈夫」「症状があるからきっと糖尿病だ」のどちらも早計です。
糖尿病で起こりうる症状と、その限界
糖尿病情報センターによると、血糖が高い状態が続くと次のような症状が現れることがあります(糖尿病情報センター)。
- のどの渇き、水分をとる量が増える
- 尿の回数や量が増える
- 特に心当たりがないのに体重が減る
- 疲れやすい、だるい
また、血糖が非常に高くなると意識に影響が出ることもあるとされています。
ただし、これらの症状は糖尿病に特有のものではありません。暑さや水分のとり方、睡眠不足、他の病気でも似た変化は起こります。米国NIDDKも、2型糖尿病では症状がないか、あってもごく軽いことがあると述べています(NIDDK: Symptoms & Causes of Diabetes)。症状は「調べるきっかけ」として受け止め、血液検査の結果と症状・経過をあわせて医師が判断します。
なお、2型糖尿病は肥満の人だけがなる病気ではありません。糖尿病情報センターは、生活習慣だけで決まるものではないと説明しており、自分を責める必要はありません(糖尿病情報センター)。
受診を急ぐサインと、外来で相談したいこと
のどの渇きや多尿に加えて、次のような状態があるときは、通常の予約を待たず、早急に医療機関を受診してください。
- 吐き気や嘔吐、腹痛が続く
- 立っていられないほどの強いだるさ、ふらつき、失神
- 息苦しさ、呼吸が速い
- 意識がもうろうとする、受け答えがおかしい
NIDDKは、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)と呼ばれる状態で、著しい疲労、呼吸困難、脱水や失神、腹痛、嘔吐などが起こりうると説明し、これは緊急事態であるとしています。DKAは1型糖尿病に限らず、2型糖尿病でも起こることがあります(NIDDK)。もちろん、これらの症状があれば必ずDKAというわけではありませんが、自宅で食事や運動で様子を見るべき状況ではありません。
意識の異常、急な呼吸困難、失神などがあれば119番へ連絡してください。厚生労働省の救急受診案内も参考になります。
緊急のサインがない場合も、続くのどの渇き・尿の変化や、健診での指摘は内科へ相談する理由になります。症状が急に進む、急激にやせる、検査機関から至急の受診を指示された場合は、通常の受診予定を待たず、その日のうちに医療機関へ相談してください。症状が軽くても、検査値や経過によって受診の急ぎ方は異なります。
血糖値とHbA1cの違いと、再検査が必要になる理由
健診でよく目にする「血糖値」と「HbA1c」は、どちらも糖尿病の評価に使われますが、見ているものが異なります。NIDDKの説明では、血糖値はその採血時点での血液中の糖の濃度を示し、HbA1cは比較的長い期間の血糖の傾向を反映します(NIDDK: Diabetes Tests & Diagnosis)。
日本での診断の考え方は、日本糖尿病学会のガイドラインが定めています。ポイントを患者の立場で整理すると次のようになります(糖尿病診療ガイドライン2024 第1章)。
- 原則として、別の日に行った検査で糖尿病型の結果が再現されることを確認し、そのうち少なくとも1回は血糖値の測定を含める
- HbA1cだけを繰り返し測っても、それだけでは診断は確定しない
- 同じ採血で血糖値とHbA1cの両方が糖尿病型なら、1回の検査で診断できる場合がある
- 糖尿病型の血糖値に、のどの渇きや多尿などの典型的な症状が伴う場合も、診断が成り立つことがある
つまり、「HbA1cが1回高かった=即糖尿病」とは限らない一方で、「必ず何度も検査を待たなければ分からない」わけでもありません。どの組み合わせで判断するかは、検査結果と症状・経過を見た医師が決めます。
また、同ガイドラインは、鉄欠乏、溶血、出血や輸血、急激な発症や悪化などがあると、HbA1cが実際の血糖の平均とずれることがあると述べています。健診の値をそのまま受け取るのではなく、こうした背景も含めて解釈が必要になる場合があるということです。
家庭用の血糖測定器や持続血糖測定(CGM)の数値だけで、正式な診断を確定することはできません。ただし、異常な値が出たなら、それ自体が医師に相談する十分な理由になります。
血糖値やHbA1cと、目の合併症である網膜症との関係は、複数の国のデータをまとめた観察研究(Colagiuriら、2011年)でも調べられています。この研究は検査値とその時点の網膜症との関連を示すもので、個人の将来や治療効果を予測するものではありません。実際の診断では、上記の日本の診療ガイドラインに沿って検査結果を判断します。
受診するときに持っていくもの・伝えること
診察をスムーズに進めるために、次のものを用意しておくと役立ちます。
- 健康診断や人間ドックの結果(今回のものだけでなく、手元にある過去の分も)
- 現在飲んでいる薬やサプリメントのリスト、またはお薬手帳
- 症状がいつ頃から始まったか(のどの渇き、尿の回数、だるさなど)
- 体重の変化(いつから、どのくらい)
- 家族に糖尿病の人がいるかどうか
特に過去の健診結果は、値がいつから変わり始めたのかを知る手がかりになるため重要です。空腹での採血が必要かどうかは受診時に指示があります。「食事をしてしまったから」と受診を遅らせる必要はありません。
よくある質問
症状がまったくないのに、健診の指摘だけで受診してよいですか?
はい。糖尿病は症状がないまま進むことがあるため、健診での指摘は受診の十分な理由です(糖尿病情報センター)。症状が出るまで待つ必要はありません。
痩せているので糖尿病ではないと思うのですが。
体型だけでは判断できません。2型糖尿病は肥満の人だけの病気ではなく、痩せていても発症することがあります。また1型糖尿病はどの年齢でも始まりうるとされています(NIDDK)。気になる症状や検査値があれば、体型にかかわらず相談してください。
早く見つかれば糖尿病は治りますか?
早く見つかったことだけで、その後の経過は決まりません。糖尿病の型や血糖の状態によって必要な対応が異なるため、診断後も治療や経過の確認を医師と相談して続けます。まずは今の状態を把握することが出発点です。
酒田市・丸岡医院の内科で相談するには
上で挙げた緊急のサイン(嘔吐、強いだるさ、息苦しさ、意識の異常など)がある場合は、通常の外来を待たず、すぐに医療機関を受診してください。
そうした緊急性がなく、のどの渇きや頻尿が気になる、健診で血糖やHbA1cを指摘された、という方は、丸岡医院(山形県酒田市)の内科でご相談いただけます。詳しくは内科のご案内をご覧ください。健診結果の見方については、健診結果の相談についてのご案内も参考になります。
受診は直接の来院、または電話(0234-23-8166)でお問い合わせください。なお、検査の内容や結果が出るまでの期間、その後の治療方針は、診察時の状態によって異なります。
参考文献
- 日本糖尿病学会.糖尿病診療ガイドライン2024 第1章「糖尿病診断の指針」
- 国立健康危機管理研究機構 糖尿病情報センター.糖尿病とは
- NIDDK.Symptoms & Causes of Diabetes(2024年10月改訂)
- Colagiuri S, et al.Glycemic thresholds for diabetes-specific retinopathy: implications for diagnostic criteria for diabetes.Diabetes Care. 2011;34:145–150.DOI:10.2337/dc10-1206(抄録を参照)
- NIDDK.Diabetes Tests & Diagnosis(2022年7月改訂)
- 厚生労働省.こんな時は迷わず119へ




