健康診断で「脂質異常症」や「コレステロールが高い」と指摘されると、まず食事を変えようと考える方が多いと思います。ただし、脂質異常症の食事は「油を減らせばよい」という単純なものではありません。どの数値が高いかによって、見直すべきポイントが変わります。
健診結果の見方と食事の置き換え方を整理し、食事だけで様子を見ずに受診したい場合も説明します。
まず健診結果で「何が高いのか」を確かめる
脂質異常症の食事療法は、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が高いのか、中性脂肪(トリグリセライド)が高いのか、あるいは両方なのかで方向性が異なります[2]。健診結果票を手元に置き、どの項目に印がついているかを先に確認しましょう。
中性脂肪は「空腹時かどうか」で見え方が変わる
中性脂肪は食事の影響を受け、空腹時と食後などの随時採血では評価の基準が異なります。食後の値も評価の対象です。「食べた後だから問題ない」と決めつけず、結果票に採血条件の記載があるかを確認してください。なければ、採血前に食事をとったかを医師へ伝えましょう[1]。
一回の検査結果だけで、食事が原因と決まるわけではありません。過去の結果、体質、持病や薬も含めて評価します[1]。
健診結果の見方全般については、健診結果の見方のページも参考にしてください。
LDLコレステロールが高い場合の食事の考え方
LDLコレステロールを上げやすいのは、飽和脂肪酸のとりすぎと、食品に含まれるコレステロールのとりすぎです[1][2]。飽和脂肪酸は、脂身の多い肉、バターや生クリームなどの乳脂肪、加工肉、菓子類に多く含まれます。
日本動脈硬化学会のガイドラインでは、LDLコレステロールが高い人に対して、飽和脂肪酸と食事性コレステロールを控えめにすることが示されています[1]。具体的な量は、検査値や持病、食事全体を踏まえて調整します。
「減らす」だけでなく「置き換える」
学会のQ&Aでは、飽和脂肪酸を減らす際に、魚や植物性食品に多い不飽和脂肪酸に置き換えることが勧められています[2]。ここで大切なのは、置き換えであって「追加」ではないという点です。今の食事にオリーブオイルやナッツを足すと総エネルギーが増えてしまい、別の問題につながります。
また、野菜、海藻、大麦、豆類などに含まれる食物繊維は、LDLコレステロールの低下を後押しするとされています[2]。主食の一部を麦ごはんにする、副菜に豆料理を加えるといった工夫は、無理のない範囲で続けやすい方法です。
中性脂肪が高い場合の食事の考え方
中性脂肪が高い場合、総エネルギーのとりすぎに加え、糖質やアルコールのとり方も見直します[2]。甘い飲み物、清涼飲料、菓子パン、晩酌の量と頻度を振り返ることが出発点になります。
とくに飲み物は見落とされがちです。加糖のコーヒーやジュース、スポーツドリンクを毎日飲んでいる場合、それを無糖のお茶や水に変えるだけでも、糖質の摂取量は大きく変わります。
なお、中性脂肪が著しく高い場合には、脂肪の種類や量について個別の制限が必要になることがあります[2]。数値が極端に高いときは、自己判断で食事を組み立てるのではなく、医師に相談してください。
毎日の食事で試しやすい置き換え
次は、学会の食事療法の考え方を日常の献立に当てはめた例です。すべてを一度に変えず、続けやすいものから始めましょう[2]。
- 脂身の多い肉料理の一部を、魚や大豆製品(豆腐、納豆など)に置き換える
- 今の食事量はそのままに油やナッツを「足す」のではなく、既にある脂質と入れ替える
- 加糖のコーヒーやジュースを、無糖の飲み物に置き換える
- 白米の一部を麦ごはんにする、豆や野菜の副菜を一品加える(胃腸の調子に合わせて量を調整)
これらは「この食品を食べれば治る」という意味ではありません。食品の種類だけでなく、量や組み合わせ、続け方も大切です。
炭水化物を全面的にやめる必要はない
中性脂肪が高いからといって、炭水化物を極端に制限することは勧められていません[2]。とくに慢性腎臓病(CKD)、糖尿病、高齢で体力が落ちている方(フレイル)などは、個別の配慮が必要です。必要な栄養を保ちながら、持病に応じた制限と両立させる必要があります[2]。持病がある方は、食事を変える前に主治医へ相談してください。
食事だけがすべての原因ではない
脂質異常症は、食生活の影響を受けますが、遺伝的な体質、甲状腺やホルモンの病気、服用中の薬などが関わることもあります[1]。とくにLDLコレステロールが著しく高い場合、家族性高コレステロール血症のような遺伝性の病気や、他の病気が背景にある可能性を医師が評価する必要があります[1]。
食事に気をつけているのに数値が下がらない場合、「努力が足りない」のではなく、食事以外の要因があるのかもしれません。その判断は医療機関で行うものです。
食事療法の研究でわかっていること
食事の見直しがLDLコレステロールにどの程度影響するかを調べた研究として、カナダで行われたランダム化比較試験があります[3]。心血管リスクが低〜中程度の成人351人を無作為に割り付け、345人を解析した試験で、植物ステロール、大豆たんぱく、粘性の食物繊維、ナッツを組み合わせた食事指導と、飽和脂肪酸を控える食事指導を6か月間比較したものです。
結果として、組み合わせ型の指導を受けたグループでは、一般的な指導のグループよりLDLコレステロールの低下が大きいことが示されました[3]。対象は心臓病や糖尿病、腎臓・肝臓の病気がなく、脂質の薬を飲んでいない人に限られており、評価したのは血液検査の値であって、心筋梗塞などの発症を減らせるかどうかを調べたものではありません。また、途中で脱落した参加者も少なくなく、食品業界からの研究支援も一部にありました[3]。
この結果から、誰でも同じ割合でLDLが下がる、食事だけで薬の代わりになる、とは言えません。効果は再検査で確かめます。
受診の目安と、持っていくとよいもの
脂質異常症は自覚症状がほとんどありません。数値が高くても体調に変化がないため、「様子を見よう」と放置されやすい病気です。しかし、動脈硬化は症状のないまま進むため、指摘を受けたら一度は医療機関で相談することをおすすめします[1]。
食事だけで数か月待たないほうがよい方
次に当てはまる方は、食事の見直しだけで様子を見るのではなく、早めに受診してください[1]。
- 心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などの既往がある
- 糖尿病と診断されている
- 血縁者に若くして心筋梗塞などを起こした人がいる
- 健診で脂質の値が著しく高いと指摘された
これらの場合、食事だけでなく薬による治療を組み合わせるかどうかを、総合的なリスクに基づいて医師が判断します[1]。薬を始めるかどうか、いつまで続けるかは、あらかじめ決まったスケジュールで自動的に決まるものではなく、検査結果と経過を見ながら相談して決めていきます。
受診時に持参するとよいもの
- 過去と今回の健診結果票(経年の変化がわかります)
- 数日分の食事の写真(間食や飲み物、晩酌も含めて)
- 現在服用中の薬やサプリメントがわかるもの
- ご家族の病歴(心臓病、脳卒中、脂質異常症など)
食事の写真は、記憶に頼るより正確に食生活を振り返る材料になります。診察時には「まず何を変えるか」と「次の再検査はいつか」を確認しましょう。記録がそろっていなくても、受診を先延ばしにする必要はありません。
丸岡医院本院での受診について
丸岡医院本院の内科・消化器内科では、健診結果についてのご相談を受け付けています。内科の初診は予約なしで直接ご来院いただけます。ご不明な点は電話(0234-23-8166)でお問い合わせください。
よくある質問
もち麦を食べているのにコレステロールが下がらないのはなぜですか
食物繊維をとる工夫は役立ちますが、一つの食品だけで数値が下がるとは限りません。食事全体の脂質や量、続け方に加え、体質や他の病気の影響も確認します[1][2]。紹介した試験も複数の食品を組み合わせた食事指導の研究で、もち麦だけの効果を示したものではありません[3]。量を増やし続ける前に、結果票と食事内容を医師に相談しましょう。
卵は食べてよいですか、やめるべきですか
一律に「1日1個までなら安全」とも「食べてはいけない」とも言えません[2]。卵の影響は、食事全体でとっているコレステロールや飽和脂肪酸の量、ご自身のLDLの値やリスクによって変わります。LDLが高い方は卵を含めた食事全体を振り返る必要がありますが、卵だけで食事の良し悪しを判断せず、他の食品も含めて調整しましょう。個別の判断は医師と相談してください。
数値が下がったら薬はやめられますか
薬を減らす・やめる判断は、数値だけでなく、これまでの病歴や全体のリスクを踏まえて医師が行います[1]。特に心臓病の既往がある方は、生活習慣と薬を組み合わせて続けることが基本とされています[1]。自己判断で中断せず、必ず主治医に相談してください。
食事を変えてからどのくらいで改善しますか
変化の出方は個人差が大きく、「何週間で必ず下がる」という目安はありません。研究では半年程度の期間で評価されていますが[3]、ご自身の変化は実際に再検査をして確かめる必要があります。受診時に次の検査時期を決め、その結果をもとに続ける内容を調整していくのが現実的な進め方です。




