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循環器疾患

放散痛とは|胸・肩・腕に広がる痛みと受診の目安

胸・肩・腕へ広がる痛みの受診目安を案内する、スマートフォンとメモ用紙のイメージ画像

「胸が苦しいと思ったら、なぜか肩や腕まで痛い」「あごや背中にも重苦しさが広がる」。こうした痛みの広がりは「放散痛(ほうさんつう)」と呼ばれることがあります。

放散痛とは、ある場所の痛みが肩や腕など別の部位へ広がって感じられることを表す言葉です。病名ではなく、原因を確かめるには痛みの経過や診察・検査が必要です。この記事では、特に胸や上半身に広がる痛みの受診判断を解説します[1]。

まず確認|迷わず119番する症状

痛みの性質や広がり方を自分で分析する前に、緊急性の確認が先です。次のような症状があるときは、受診の予約や電話相談ではなく、すぐに119番へ連絡してください[3]。

  • 突然の激しい胸の痛み、背中の痛み
  • 突然の息苦しさ・呼吸困難
  • 胸の中央を押さえつけられるような痛みが2〜3分続く
  • 意識がおかしい、反応が鈍い

胸部の不快感に加えて、冷や汗や吐き気を伴う場合は、心筋梗塞や不安定狭心症が疑われます[1]。胸の圧迫感にこうした症状が重なるときは、様子を見ず119番へ連絡してください。

重い症状があれば、時間を測って待ったり、自分で運転して受診したりせず、救急要請を優先してください。

放散痛はどんな感じ?|「鋭い痛み」とは限らない

放散痛の感じ方は一様ではなく、電気が走るような鋭い痛みだけを指すものではありません。

急性冠症候群のガイドラインでは、症状は圧迫されるような感じ、重苦しさ、焼けるような感じ、あるいは漠然とした「不快感」として表現され得るとされています[1]。痛みよりも、息が詰まる感じが目立つこともあります[1]。

広がる部位として挙げられているのは、あご、首、肩、腕、背中、みぞおち(上腹部)などです[1]。さらに注意が必要なのは、胸の症状がはっきりせず、胸以外の部位の症状だけとして現れる場合もあるという点です[1]。

「左腕だけ」「短時間だから」で除外しない

よくある誤解は、部位や持続時間、痛みの質で自分を安心させてしまうことです。

ガイドラインでは、症状の性質や強さだけで急性冠症候群を否定することはできないとされています[1]。右腕だから違う、胸が痛くないから違う、押すと痛いから筋肉だ——こうした自己判断だけで心筋梗塞を除外することはできません[1]。

症状は「自分で答えを出す材料」ではなく、「医療者が原因を評価するための出発点」と考えてください。

医療機関では何を調べるのか

胸や上半身に広がる痛みで受診したとき、医師が考えるのはまず「命に関わる原因を見落とさないこと」です。

急性冠症候群の初期診断では、問診(症状の経過)、身体診察、心電図、そして必要に応じた血液検査(トロポニンなどの心筋バイオマーカー)を、それぞれ単独ではなく総合して判断します[1]。

ここで知っておいていただきたいのが、1回の心電図が正常でも、それだけで心臓の問題が完全に否定されるとは限らないということです。ガイドラインでは、臨床的に必要と判断される場合には心電図や血液検査を時間をおいて繰り返すことが示されています[1]。「さっき調べて異常なしと言われたのに、また症状が出た」というときに再受診が必要になるのは、このためです。

症状や診察結果に応じて、救急対応や専門的な検査・治療ができる医療機関での評価が必要になります。

心臓以外の原因も含めて考える

胸やみぞおちの症状は、心臓以外の原因で起こることもあります。急性冠症候群のガイドラインでも、胸部症状の鑑別として消化器の疾患や筋骨格系(胸壁)の問題などが挙げられています[1]。

診察では、緊急性の高い心臓・血管などの病気を見逃さないようにしながら、ほかの原因も併せて評価します。原因が定まらないうちに、痛む場所を強く揉む、温める、市販の鎮痛薬で抑え続ける、といった対処を一律におすすめすることはできません。症状を紛らわせることで、受診のタイミングが遅れる可能性があるためです。

症状の研究から分かっていること

心筋梗塞の症状については研究も行われています。救急外来を受診した急性冠症候群の疑い例を対象に、トロポニンによる診断を基準として、受診時の症状がどのように現れるかを男女で調べた前向き研究があります[2]。

この研究では、心筋梗塞と診断された女性にも典型的とされる症状が多くみられました[2]。性別による思い込みも避け、症状と検査を組み合わせて判断することが大切です[1]。これは救急外来の患者を対象にした研究で、一般の方が症状だけで病気を判定するためのものではありません。

受診のときに伝えたいこと

上記の緊急症状がなく、受診に備えられる状況なら、次の内容を整理して伝えてください。問診で確認する痛みの経過をもとにした準備項目です[1]。

  • いつから始まったか(発症の時期)
  • 何をしているときに起きたか(安静時か、動いたときか)
  • どのくらい続いたか
  • どこが痛むか、どこまで広がるか
  • 一緒にあった症状(冷や汗、吐き気、息苦しさなど)
  • 服用中の薬

ただし、メモを作ることを優先して緊急の対応を遅らせてはいけません[3]。危険な症状があるときは、記録より先に119番です。

痛みが「今は治まっている」場合

痛みが消えたからといって、必ずしも問題がなかったとは限りません。

新しく起きた胸の痛みが治まった場合や、原因がはっきりしない痛みが繰り返し起きている場合は、症状が治まっていても、速やかに医療機関へ相談してください[1]。一方で、再び痛みが出て、そのときに激しい痛み・息苦しさ・冷や汗などの危険な症状を伴うなら、それは緊急の状況です[1,3]。

治まった後でも、強い痛みや失神を伴った場合は緊急の評価が必要なことがあります。迷うときも、次の通常受診まで自己判断で待たずに相談してください。

よくある質問

Q. 放散痛は左腕にだけ出るものですか?

いいえ。ガイドラインでは、広がる部位としてあご、首、肩、両腕、背中、みぞおちなどが挙げられています[1]。左側に限られるわけではなく、右側でも起こり得ます。さらに、胸の症状がはっきりせず胸以外の部位だけに症状が出ることもあります[1]。「左腕ではないから大丈夫」という考え方で除外しないでください。

Q. 痛みが止まったのですが、受診しなくてよいですか?

痛みが消えたことは、原因がなかったことの証明にはなりません。新しく起きた胸の痛みが治まった場合や、説明のつかない痛みが繰り返している場合は、速やかに医療機関へ相談してください[1]。また、1回の検査が正常でも、臨床的に必要と判断されれば検査を繰り返すことがあります[1]。症状が再発したときは改めて相談してください。

Q. 市販薬で様子を見てもよいですか?

原因が分からない段階で、痛み止めを使って経過を見ることを一律におすすめすることはできません。症状が一時的に隠れることで、必要な評価が遅れるおそれがあるためです。特に、胸の圧迫感が続く、冷や汗や吐き気を伴う、息苦しいといった症状があるときは、薬で様子を見るのではなく緊急の対応が必要です[1,3]。

丸岡医院での受診相談

放散痛は診断名ではなく、痛みの広がり方を表す言葉です。感じ方は鋭い痛みとは限らず、圧迫感や重苦しさ、不快感として現れることもあります[1]。部位や持続時間だけで自己判断せず、原因の評価を受けることが大切です。

危険な症状があるときは119番。そうでない場合、胸や上半身に広がる症状が気になるときは、内科で相談してください。

丸岡医院(山形県酒田市)では、初めての内科受診は予約なしで直接来院いただけます。受診の流れについてのご不明点は、電話(0234-23-8166)でご確認ください。

なお、緊急性の高い症状があるときは、来院や電話連絡ではなく救急要請を優先してください。

参考文献

  1. 日本循環器学会ほか.急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版).https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2018/11/JCS2018_kimura.pdf
  2. Ferry AV, Anand A, Strachan FE, et al. Presenting Symptoms in Men and Women Diagnosed With Myocardial Infarction Using Sex-Specific Criteria. J Am Heart Assoc. 2019;8:e012307. doi:10.1161/JAHA.119.012307.(著者所属機関掲載の要旨を参照) https://www.research.ed.ac.uk/en/publications/presenting-symptoms-in-men-and-women-diagnosed-with-myocardial-in/
  3. 厚生労働省.上手な医療のかかり方「緊急性の高い症状」.https://kakarikata.mhlw.go.jp/kakaritsuke/urgency.html

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