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血液疾患

IDA(鉄欠乏性貧血)とは|検査の見方・原因の調べ方・治療

鉄欠乏性貧血の検査と原因の調べ方を紹介する、書類とペンのイメージ

IDAは iron deficiency anemia の略で、日本語では鉄欠乏性貧血と呼びます。体内の鉄が不足して、赤血球の中で酸素を運ぶヘモグロビン(Hb)を十分に作れなくなり、その結果として起こる貧血です。貧血にはほかにも慢性の病気に伴うもの、ビタミンB12や葉酸の不足によるもの、骨髄の病気によるものなどがあり、貧血がすべてIDAというわけではありません[1]。

この記事では、健康診断でHbが低いと指摘された方が、結果をどう読み、何を医師に伝え、どのような場合に急いで受診すべきかを整理します。健診結果と過去の検査記録を用意すると、値の変化を診察で確認しやすくなります。

IDA(鉄欠乏性貧血)の基本

鉄は、ヘモグロビンの材料として使われるほか、肝臓などにフェリチンという形で貯蔵されています。鉄が足りなくなると、まず貯蔵鉄が減り、次にヘモグロビンの産生が追いつかなくなって貧血になります。つまり「鉄欠乏」と「鉄欠乏性貧血」は段階が異なり、貯蔵鉄が減っていてもまだ貧血の基準に達していない状態もあります[1]。

健診で貧血を指摘された場合は、自覚症状が乏しくても確認が必要です。息切れや疲れやすさなどの症状だけで原因を決めず、血液検査やこれまでの経過と合わせて評価します[1]。

検査結果の見方

健診や外来の血液検査で貧血に関係する主な項目は、Hb(ヘモグロビン)、MCV(平均赤血球容積)、フェリチン、血清鉄などです。それぞれ役割が異なり、どれか一つだけで鉄欠乏と確定することはできません[1]。

Hb(ヘモグロビン)

Hbは貧血の程度を示す指標です。健診で「貧血」と判定される根拠になるのは主にこの値ですが、Hbが低いという事実は「貧血がある」ことを示すだけで、原因が鉄不足かどうかまでは分かりません[1]。

MCV(平均赤血球容積)

MCVは赤血球一個あたりの大きさの目安です。鉄が不足するとヘモグロビンを詰め込めず赤血球が小さくなる傾向があるため、MCVが低い貧血では鉄欠乏が疑われます。ただし、赤血球が小さくなる貧血はほかにもあり、また鉄欠乏の初期や他の病気が重なった場合にはMCVが正常範囲のこともあります。MCVも単独では鉄欠乏を確定できない手掛かりの一つです[1]。

フェリチン

フェリチンは貯蔵鉄の量を反映する検査で、鉄欠乏の評価に中心的に使われます。低ければ貯蔵鉄が減っていると考えられます。注意が必要なのは、フェリチンは炎症、感染症、肝臓の病気などがあると鉄の量とは関係なく上昇する点です。そのため、フェリチンが基準範囲内であっても、背景に炎症などがあれば鉄欠乏を否定できない場合があります[1]。

血清鉄と補助的な検査

血清鉄は血液中を流れている鉄の量で、食事や時間帯、炎症の影響を受けやすく、この値だけで鉄欠乏かどうかを判定することはできません[1]。医師は、Hb・MCV・フェリチン・血清鉄などを組み合わせ、さらに炎症や肝機能などの背景を評価したうえで判断します。必要に応じてTSAT(トランスフェリン飽和度:血液中で鉄を運ぶたんぱく質にどれだけ鉄が結合しているかの割合)などの補助的な検査が追加されることもありますが、全員に必須というものではありません[1]。

健診結果を持参するときは、Hbだけでなく、MCVやフェリチンが測定されていればその値も含めて医師に見せてください。過去の健診結果があれば、値の推移も重要な情報になります。

原因の調べ方

鉄欠乏性貧血と分かったら、次に「なぜ鉄が足りなくなったのか」を調べます。鉄を補うだけで原因を放置すると、貧血が繰り返されたり、背景にある病気の発見が遅れたりするためです。診療指針では、原因を大きく次のように区別しています[1]。

  • 慢性的な出血(消化管からの出血など)
  • 月経による失血
  • 摂取不足や吸収不足(偏った食事、胃の手術後、消化管の病気など)
  • 妊娠・授乳・成長期など、鉄の必要量が増える状態

このうち、男性や閉経後の女性で鉄欠乏性貧血が見つかった場合は、月経による失血が考えにくいため、消化管からの出血がないかを検討することが特に重要とされています[1]。胃や大腸からの少量の出血は自覚がないまま続くことがあり、便の色の変化がないかも問診で確認されます。ただし、内視鏡検査を全員に一律で行うと決まっているわけではなく、年齢、症状、便の状態、これまでの検査歴などから、医師が必要性を判断します。

月経の量が多い、期間が長いといった場合は、貧血の原因として月経の評価が必要になることがあり、婦人科での相談を勧められることがあります。月経の状態は自分では「普通」と思っていても失血が多い場合があるため、周期や量の変化を具体的に医師に伝えてください。

食事の内容、胃腸の手術歴、胃薬や鎮痛薬などの内服、妊娠の可能性なども原因の手掛かりになります。原因の評価と鉄の補充は、どちらかが終わってからではなく、並行して進めるのが基本です[1]。

治療の考え方:内服・注射・輸血の違い

鉄欠乏性貧血の治療は、鉄を補うことと、原因に対処することの二本立てです。鉄剤を補う方法には内服(飲み薬)と静注(点滴・注射)があります。輸血は赤血球を補う別の治療で、鉄剤とは目的も判断の基準も異なります[1]。

内服の鉄剤

まず検討されるのは内服の鉄剤です。胃の不快感や吐き気で続けにくい場合は、自己判断で量を変えず、処方した医師に相談してください。薬の種類や飲み方を見直すことがあります。量や回数は、症状・検査結果・併用薬を踏まえて決めます[1]。

鉄剤によって便が黒くなることもありますが、薬を飲んでいることだけで出血を否定することはできません。急な便の変化や体調不良があるときは、薬の影響と決めつけず、下の受診目安を確認してください[1,2]。

静注(点滴・注射)の鉄剤

静注の鉄剤は、内服が副作用で続けられない、吸収が期待できない病気がある、出血が続いていて内服では追いつかないなど、適応を検討したうえで選ばれる選択肢です。診療指針では、アレルギー反応や、必要量を超えて投与することによる鉄の過剰への注意が挙げられており、「注射の方が早そうだから」という理由だけで選ぶものではないとされています[1]。静注が必要と判断された場合、どの医療機関で行うかは診察先で相談することになります。

輸血

輸血は、赤血球そのものを補う治療で、すべての鉄欠乏性貧血に必要なものではありません。活動性の出血がある、貧血による症状が強い、心臓や循環の状態が不安定であるなど、個別の状況をもとに判断されます[1]。輸血を行うかどうか、また入院が必要か日帰りで対応できるかといった点も、診察した医療機関の判断によります。輸血の実施場所や通院方法は、治療が必要と判断された際に医療機関へ確認してください。

治療期間について

治療期間は原因が取り除けるかどうか、貧血の程度、Hbやフェリチンの推移によって異なり、一律には決められません。Hbが正常化した後も貯蔵鉄が回復するまで補充を続けることが多く、検査で確認しながら終了時期を判断します[1]。十分に補充できないまま治療が終わることを避けるため、通院と再検査の予定は医師と確認してください。

受診の目安

救急車(119)を呼ぶべき症状

貧血の背景に急な出血や循環の異常があると、外来を待つと危険な場合があります。厚生労働省の案内では、成人で次のような症状があるときは、通常の外来を待たずに迷わず119番するよう示されています[2]。

  • 急に起きた息切れ、呼吸が苦しい
  • 持続する強い胸の痛み
  • 立っていられないほどのふらつき、意識がもうろうとする
  • 血を吐いた
  • 黒い便や血便が出た
  • 持続する激しい腹痛

これらは「貧血だから」という理由で様子を見るべき症状ではありません。特に黒い便や吐血は消化管出血の可能性があり、鉄欠乏性貧血かどうかにかかわらず急いで評価が必要です。鉄剤を飲んでいる場合も、黒い便にふらつきや息苦しさなどを伴うときは、薬のせいと考えて待たないでください。

早めに外来で相談したほうがよい場合

  • 健診でHbの低値や貧血の指摘を受けた
  • 動悸、息切れ、疲れやすさが以前より強くなった
  • 月経の量が明らかに増えた、または不正出血がある
  • 過去に鉄剤を処方されたが中断していて、症状が戻ってきた
  • 鉄剤を飲んでいるが吐き気などで続けられない

「症状が軽いから」「健診の再検査は面倒だから」と先延ばしにすると、原因の発見が遅れることがあります。症状がなくても、健診で指摘された時点で一度相談することをおすすめします。

よくある質問

鉄剤と一緒にビタミンCを飲むべきですか

ビタミンCは鉄の吸収を助けると言われてきましたが、成人の鉄欠乏性貧血患者を対象に、内服鉄剤にビタミンCを加えた群と鉄剤のみの群を比較した臨床試験では、短期間のHbの改善に明らかな差は示されず、ビタミンCを必ず追加しなければならないとは限らないことが報告されています[3]。ただしこの試験は中国の単一施設で行われ、女性が大多数を占め、観察期間が短く、長期の再発については分かっていません。食事から摂るビタミンC全般が不要という意味ではなく、サプリメントを追加したい場合は処方医に確認してください。

症状がないのに治療は必要ですか

貧血がゆっくり進むと自覚症状が出にくいことがあります。症状がなくても、鉄欠乏の背景に出血などの原因が隠れている可能性は変わらないため、検査で原因を確認し、必要に応じて補充を行います[1]。

受診のときに持っていくとよいもの

  • 健診の結果(Hb、MCV、フェリチンなど、可能なら過去分も)
  • 現在飲んでいる薬やサプリメントのリスト(お薬手帳)
  • 月経の周期・量・期間の変化のメモ(該当する方)
  • 便の色の変化、黒い便や血便の有無と時期のメモ
  • 胃や腸の手術歴、これまでの内視鏡検査の時期と結果
  • 妊娠の可能性、授乳中かどうか

これらがあると、原因の絞り込みと検査の選択がスムーズになります。

丸岡医院本院での相談について

山形県酒田市の丸岡医院本院では、内科・消化器内科として、健診での貧血の指摘や、動悸・息切れ・疲れやすさなどの症状についてご相談いただけます。健診結果や症状の経過をもとに、必要な検査や次の対応を診察でご相談ください。診療内容は内科の診療案内をご覧ください。

受診方法については受診案内でご確認いただくか、電話(0234-23-8166)でお問い合わせください。ご来院の際は、上で挙げた健診結果や薬のリストをお持ちいただくと診察がスムーズです。なお、前の項目で挙げた救急の症状がある場合は、外来のご連絡より先に119番をご利用ください。

参考文献

  1. 日本鉄バイオサイエンス学会『鉄欠乏性貧血の診療指針 第1版』2024年、公開版。学会の公開版・目次
  2. 厚生労働省『こんな時は迷わず119へ』上手な医療のかかり方。厚生労働省の救急受診案内
  3. Li N, Zhao G, Wu W, et al. The Efficacy and Safety of Vitamin C for Iron Supplementation in Adult Patients With Iron Deficiency Anemia: A Randomized Clinical Trial. JAMA Netw Open. 2020;3(11):e2023644. doi:10.1001/jamanetworkopen.2020.23644. PMID: 33136134. 論文本文(JAMA Network Open)

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