胸やけが再び出たときに確認したいこと
胸やけや酸っぱいものが上がる感じが一度おさまったのに、また出てきた。逆流性食道炎で治療を受けたことがある方ほど、「また再発した」「薬をやめたせいかもしれない」と考えやすいところです。
ただ、症状が同じに感じても、食道の状態や原因が前回と同じとは限りません。逆流性食道炎は、病型や重症度によって治療の続け方(維持療法)が変わる病気です。まず伝えたいのは次の3点です。
- 症状だけで「前回と同じ再発」「軽いから大丈夫」と決めつけない
- 処方された薬を自己判断で減らす・やめる・増やすことはせず、処方医または消化器内科に相談する
- 症状の出方や治療歴を整理してから相談すると、医師が方針を判断しやすくなる
以下で、それぞれの理由を説明します。
「再発」とは何か:症状と食道の状態は別に考える
逆流性食道炎とGERD・NERDの違い
胃の内容物が食道へ逆流して不快な症状や合併症を起こす状態を、まとめて「胃食道逆流症(GERD)」と呼びます。このうち、内視鏡で食道の粘膜に傷(びらんなど)が確認できるものが「逆流性食道炎」です。一方、胸やけなどの症状はあるのに内視鏡で粘膜の傷が見つからないものは「非びらん性胃食道逆流症(NERD)」と区別されます。
つまり、「胸やけがある=逆流性食道炎」ではありません。症状の強さと、食道の粘膜が実際に傷ついているかどうかは、必ずしも一致しないのです。
軽症と重症で、治療の続け方が異なる
日本消化器病学会のガイドラインでは、軽症の逆流性食道炎に対する初期治療として酸分泌を抑える薬(PPIやボノプラザン)が推奨され、症状や粘膜の傷が落ち着いた後も、状態に応じてこれらの薬による維持療法が提案されています。重症の逆流性食道炎では、治療をやめると粘膜の傷が再び生じることが見込まれるため、継続した酸分泌抑制が必要になると記載されています(E1)。
このため、「薬をいつまで続けるか」「症状がなくなったらやめてよいか」は、症状の有無だけでなく、内視鏡で確認された重症度や治療への反応によって判断が分かれます。「前回は薬をやめても平気だった」という経験が、今回にも当てはまるとは限りません。
治療への反応が乏しい場合は「PPI抵抗性」として別に評価される
標準的な量のPPI(胃酸の分泌を抑える薬の一種)を8週間服用しても粘膜の傷が治らない、または症状が十分に改善しない状態は、ガイドライン上「PPI抵抗性GERD」と定義されています(E1)。この場合、単に同じ薬を続けるのではなく、本当に酸の逆流が原因なのか、別の要因が関わっていないかを含めて、医師が再評価する必要があります。
国内で行われたPPI抵抗性の逆流性食道炎を対象にした臨床試験でも、いったん粘膜が治った後の維持療法の内容によって、1年後の再発の有無に差が出ることが報告されています(E3)。これは「改善しない・繰り返す場合には治療方針そのものを見直す価値がある」ことを示す背景資料であり、読者の方が自分で薬の量や回数を変える根拠にはなりません。
「新しく発症した人」と「再発した人」では、同じ治療でも反応が違いうる
日本で行われた小規模な比較研究では、内視鏡で確認されたGERDに対して初期治療を終えた後、薬を毎日続ける方法と症状が出たときだけ服用する方法を比べたところ、新しく発症した人と再発した人とで治療への反応に違いがみられました(E2)。研究の規模が小さく、使われた薬や条件も現在と異なるため、この結果を個人の再発確率や治療の選び方に直接あてはめることはできません。ただ、「再発例では薬の続け方を一律に決めず、治療歴や内視鏡所見を踏まえて医師と相談する」という考え方の背景としては参考になります。
相談前に整理しておきたいこと
繰り返す症状で受診する際、次のような点をメモしておくと、医師が「前回と同じ病態か」「治療方針を変えるべきか」を判断する材料になります。
- 症状の内容と時間帯:胸やけ、酸っぱいものが上がる、のどの違和感、咳など。起こりやすいのは食後か、夜間か、朝か
- 食事や姿勢との関係:特定の食事のあと、横になったとき、前かがみになったときなど、症状が出やすいと感じる場面
- 服薬歴:これまでに処方された薬の名前、飲んでいた期間、いつ・どのように減らした/やめたか(自己判断でやめた場合も、そのまま伝えてください)
- 過去の検査:内視鏡検査を受けたことがあるか、いつ受けたか、そのときの結果をどう説明されたか
- 生活上の困りごと:夜眠れない、食事が楽しめない、仕事に支障が出ているなど
なお、寝る向きや食べる物、食事から就寝までの時間、体重の目標値といった生活上の工夫は、体格や生活リズム、症状の出方によって適した内容が変わります。「何をすると症状が出やすいか」を記録して相談材料にすることを、まずお勧めします。
受診・相談の目安
急な強い症状は119へ
突然の激しい胸・背中の痛み、急な呼吸困難、血を吐く、血便や真っ黒い便が出る場合は、胸やけの再発と決めつけず、119番へ連絡してください。通常の外来時間まで待つための案内ではありません。厚生労働省の救急案内は、これらを救急車を呼ぶ症状として示しています(E5)。
消化器内科などに相談したほうがよい場合
次のような場合は、様子を見続けるよりも、処方医または消化器内科への相談を検討してください。
- 治療で一度よくなった症状が、また繰り返している
- 処方された薬を続けていても、症状が十分に改善しない
- 薬をいつまで続けるか、減らしてよいか迷っている(自己判断で変える前に相談する)
- 症状の出方が以前と変わってきた、新しい症状が加わった
飲み込みづらさや体重減少も相談する
米国の公的機関(NIDDK)は、逆流に関連する症状のうち、次のようなものがある場合には医療機関を受診するよう案内しています(E4)。
- 胸の痛み
- 飲み込みづらい、飲み込むときに痛い
- 嘔吐が続く
- 血液や、コーヒーのかすのようなものを吐く
- 黒いタール状の便が出る
- 心当たりのない体重減少
これらはGERDの合併症や、ほかの重大な病気に関連することがあります。「いつもの胸やけだろう」と考えて様子を見続けず、医療機関へ相談してください。上の救急症状に当てはまる場合は、通常の受診相談を待たず119番へ連絡してください。
本院での相談について
当院への相談は、直接来院いただくか、お電話でご案内しています。内視鏡検査を行うかどうか、行う場合の時期は、診察で症状や治療歴をうかがったうえで判断します。
これまでの処方内容や検査結果がわかるもの(お薬手帳、検査結果の書類など)があれば、受診時にお持ちいただくと、経過の把握に役立ちます。
受診先や来院方法は、消化器内科の案内とアクセス・連絡先をご確認ください。
参考文献
- E1 日本消化器病学会. 胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021(改訂第3版). 2021. 学会公開ページ / 英語版: Iwakiri K, et al. J Gastroenterol. 2022. DOI: 10.1007/s00535-022-01861-z
- E2 Nagahara A, et al. Difference in efficacy of proton pump inhibitor between new-onset and recurrent gastroesophageal reflux disease: Result from a study of on-demand versus continuous maintenance therapy in Japan. Hippokratia. 2015;19(1):53–56. PMID 26435648
- E3 Kinoshita Y, et al. Efficacy and safety of twice-daily rabeprazole maintenance therapy for patients with reflux esophagitis refractory to standard once-daily proton pump inhibitor: the Japan-based EXTEND study. J Gastroenterol. 2018;53(7):834–844. DOI: 10.1007/s00535-017-1417-z
- E4 National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases (NIDDK). Symptoms & Causes of GER & GERD in Adults. 最終レビュー2020年7月、2026年9月13日閲覧. https://www.niddk.nih.gov/health-information/digestive-diseases/acid-reflux-ger-gerd-adults/symptoms-causes
- E5 厚生労働省. こんな時は迷わず119へ. 成人の胸・背中、腹部の症状。2026年9月13日確認。




